雑誌掲載/判例地方自治NO.215 平成13年9月号<発行 株式会社 ぎょうせい>
当研究財団の上妻直正理事長の随想が、「判例地方自治NO.215 平成13年9月号」(株式会社にぎょうせい)掲載されました。以下に、その記事を掲載してあります。
−随想−集権の中の分権と合併を考える(著:上妻直正理事長)

省庁再編は「国から地方へ」を前提にはしていたものの各省の分立割拠を克服し内閣による「政治主導」を強める、すなわち「集権化」を改革の基調としている。それに対して「地方分権」は中央地方関係を「上下・主従から対等・協力」へと、階統制でない新しい関係に分権改革するものとされる。このような両者の底流にあるものは「集権を求める力」と「分権を求める力」が「同床異夢・呉越同舟」しているのではないだろうか。それもこれらは統合されて新しい社会を求める理念となり「構造改革」に結びつくことになるであろうか−−。将来に向かって今問われているのである。
そもそも、今回の分権は国から地方への大幅な権限移譲を伴う「改革」ではなかった。地方分権推進委員会が道州制導入や連邦制などの新しい「地方制度」を考える−−いわゆる「受け皿」を排除して現行の都道府県と市町村の「二層制」の地方制度を前提として分権化を進めるという立場をとったことだ。
まず、1996年8月の第一次勧告は「都道府県から市町村への分権」として「受け皿」となる市町村合併論である。これに対して97年7月の第2次勧告では中央官庁・自民党の強い政治的圧力の下、財政再建の手段として国主導型の合併推進論に代わった。こうした2つの動因によって前者は棚上げされ後者主導の重点シフトを生じたものといえる。言うまでもなくわが国・地方ともに財政危機的状態から脱却するには抜本的改革が不可避である。
しかし、それだけではない。20世紀を通じて生じた技術革新による社会構造の変化、それに伴う広域行政の変化である。国民の行動圏、生活圏、経済の国際化は著しく、多くの地域でその範囲は行政区域や県境も超えて広域化した。その結果、広域的政策や事務調整コストが増大するとともに都市地方圏全体として資源が有効利用されない状態が生じてきている現在、合併が必要とされる問題状況は複雑である。しかも、市町村の規模拡大による合併推進論が問題に対する解決策とは思えない。それ以外にも多様な対応策があり、その可能性を追求することだ。現在、市町村規模の格差はきわめて大きい。3000万人を超える政令都市から数百人の村まで基本的に同じ市町村制の下に置くことに無理難題が生じているからだ。さらに、都道府県制のあり方にも多くの問題が波及している。中央集権の中の分権には自ら限界があり、合併問題解決には至らない広域化対応及び効率化の視点からすれば合併とは別の選択肢として広域連合の制度を活用する途がある。旧自治省は現在まで広域市町村圏等そうした手法の活用を推進してきた。最近進められている合併のあり方はすぐれて政治的運動である。当該市町村は問題をしっかり認識して自分の住む地域にとって最善の方策を選択すべきである。現在の状況において合併が自主的原則として必要であるが決して万能薬ではない。特に人口の散在する農村にあっては合併に加えてあるいは別に解決策を検討すべきであると考える。
基本的には市町村の適正規模、合併の類型、合併効果等の総合評価が必要となる。例えば大都市周辺は社会構造の変化と実態に合わせた行政の枠組みとして、地方都市拡大型は今日多くの地域に存在している都市圏統合を一つの自治体とするものであり地域発展と合理的まちづくりにも合併の効果が期待できる。新たな広域連合のあり方についてむしろ市町村の側からの積極的な提案が期待され、それは当然都道府県制度の見直しにも結びつくことになる。
2001/09/04update
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