インタビュー/放置自転車と駐輪場整備について
放置自転車の群れ 全国都市拠点で悩みのタネに 官民一体のPFI事業で駐輪場整備を<2002年5月15日オフィス家具新聞掲載>
「官・民協力による新しい街づくり」を多方面の分野で研究・調査しているシンクタンク、(財)都市経済研究所(東京都港区新橋5-10-8笹屋伊藤ビル)。昨年2001年には『行政財産を活用した新たな自転車駐輪場整備のあり方』の報告書をまとめている。
社会的にも大きな悩みのタネにもなっている駐輪場問題は、都市再生・都市活性化に向けて避けて通れない難問といえる。同研究所の永野貴義主任研究員に広範囲な意味での同問題について取材した。
「自転車の利便性と利用しやすさが注目され続けています。健康面を含めてのスポーツ的なメリットも大きく、さらに自転車本体の単価がかなり安くなっていることもあり、自転車の利用者は増加の一方です。自転車の激増と並行するように放置自転車、駐輪場問題が全国主要都市の悩みのタネになっている訳です。」と永野氏は語る。
問題になっている放置自転車群が出現するのは駅周辺、大型商業施設周辺が多い。しかし、放置自転車を整備するための駐輪場をつくるには相応の土地と投資が必要だ。どの自治体も財源は厳しく、駐輪場を整備するには四苦八苦しているのが現況。そこで近年、注目されているのがPFI事業という手法。民間企業の活力を導入して、従来なら公共で実施するものを民間が行うもので、同事業の対象として駐輪場の整備・運営も有力視されている。
永野氏は「自転車の諸問題は大きな意味では都市問題、交通問題になっています。特に放置自転車問題は全国各都市の拠点で難問となっています。いわば都市における交通体系システムをどのように21世紀型に再構築していくかが、解決策として考えられます。こうした交通システムとして自転車も大きな役割を担っていかなければならない。そして、それに伴う駐輪場問題の調査研究が今、行われているところです。
やはり公共だけではやりきれないので、民間の協力が重要。民間企業の経営運営の場合は、ビジネスとして成立するか否かがポイントになります。民間の知恵やノウハウをどう生かしていくかという一つの考え方・手法がPFI」と語る。
官と民が協力し合い、役割分担する新しい試みとして成功した一例がこの駐輪場だと永野氏はいう。品川区の場合、無料だった駐輪場を有料化したことで使い勝手も良くなり、周辺の環境も良くなった。区の行政財産である土地に民営の駐輪場を事業として立ち上げている。法制度上の課題もあったが踏み切った。PFI法は改正され、行政目的によって使用制限はあるが、事業期間中の貸し付けという形で土地使用を認めたようだ。行政財産を民間企業・NCDに有料で貸して、利用者からの利用料金はNCDに入る。NCDは、土地の使用料を自治体に払う。品川区にすると、従来は無料であった駐輪場から土地の使用料が入ることになる。
品川区としては、有料駐輪場になることによって駐輪場はきれいになり、効率的になり、周辺の環境がよくなった。有料化によって駐輪場への乗り捨て問題なども減少した。従来は、コストばかりかかっていたが、事業者からの地代が入ってくる。PFI事業ではないが、官と民が知恵を出し合い、役割分担をした事業として成功した例がこの有料駐輪場といえる。放置自転車対策としても強力な一手法といえる。
小泉総理が進めている公共事業の民営化の小型版がこの事業だ。従来、自治体が駐輪場を作る場合、非常に時間がかかっていたが、短時間にすむ時間的なメリットや実績を踏まえた事業の展開が増加しそうだ。
現在、PFI事業導入による駐輪場整備の検討を展開しているのは東京都足立区と茨城県取手市、そして奈良県の橿原市。PFI事業として成立するかどうかの判断は、自治体内部で検討するか、あるいはシンクタンクやコンサルタントに委託して運営できるか否かを調査する。その中では勿論、従来方式とPFI方式を比較した数字が出てくる。
PFI方式導入による事業展開の場合はコスト削減、よりよいサービスの提供が表面に出てくる。事業者の募集要項の作成の段階で(財)都市経済研究所のようなシンクタンクが登場してくる訳だ。その要項を検討した民間企業が応募の手をあげてくる。前提条件である台数、規模等に基づいて整備すると、このような駐輪場整備を作ることができるというように提案する。それらのプレゼンテーションと提示金額を自治体が評価、選定して、最もベストな事業者を選ぶという段取りになっている。
【放置自転車対策】
放置自転車の対策としての方法の第一は駐輪場の整備だが、整備するには土地とお金の問題がある。これまで多くの自治体は、駅前に乗り入れる絶対台数の減少、レンタサイクルの導入、バス等の公共交通機関の乗り入れ促進等の対策を講じてきている。放置自転車をなくすには、駐輪場の整備と放置自転車の撤去活動の2つが必要不可欠だ。
(総務庁・現総務省)12年度調査の放置自転車全国ワースト10のトップは東京都豊島区・池袋駅周辺、2位は江東区・亀戸駅周辺があげられている。全国の放置自転車のメッカといわれる駅の条件をみると交通機関が錯綜し、大型商業施設が集まっており、駐輪場整備の土地がない場所となっている。池袋駅の場合、朝夕に放置自転車撤去をしているようだが、時間がたてば湧き出るように自転車利用者が乗り付けて停めていく。
永野氏は「豊島区は年間十数億円ものお金を放置自転車対策に遣っている。放置自転車の撤去、関連する人件費、運送費、保管所の管理費、仮に引き取りに来ないで放置自転車を処分する時は、その処分費もかかる。貴重なお金が浪費されている訳ですね。これが全部税金でまかなわれている。しかし、仮にPFI方式導入による新しい駐輪機システムの導入、事業展開することで、ある程度のコスト削減につながるのではないかと思います」と語る。
「また、同システムの導入で放置自転車問題の全面解決になるか否かを問われると、放置自転車が皆無になることはないと思う。しかし、ある程度減少する可能性はあると思います」
一方、豊島区では放置自転車を対象にした鉄道事業者への対策課税構想を本年1月に打ち出して、関係者を驚かせた。区は、放置自転車対策に年間12億円をかけているのに、鉄道事業者からは用地提供等の協力がないために、放置自転車一台に3千円徴収しようというもの。都知事も区の気持ちもわかるが放置自転車の持ち主が全部鉄道利用者とは限るまいという見解。この問題は、今後も引き続き両者の話し合いがなされていきそうだ。
永野氏は「結局、放置自転車問題はつきつめていくと利用者のモラルに尽きる。条例で禁止区域になっているのに、一人が駐輪すると次々に停めていく。人が通れなくなるほど大量の自転車が停められると、車イスを利用する人は通れず、車道に溢れた自転車で緊急車両の進行を妨げる事態にもなる。安心して住める街づくりの一環として、この放置自転車問題を考えていかなければならないと思います」と語った。
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