インタビュー/中心市街地活性化を突破口とした<都市再生>へのシナリオ
(株)谷澤総合鑑定所 代表取締役として、また、当研究財団の顧問として、わが国の土地政策や新しい都市づくりの実践に多大な業績と貴重な政策提言を残された坪田隆宏先生が、平成11年10月9日、急逝されました。
以下は、中心市街地活性化法の成立を突破口とする大胆な‘都市再生・経済再生へのシナリオ’を提起した坪田代表取締役(当時)のインタビューです。(1998年9月、(財)都市経済研究所にて)
坪田 隆宏(株)谷澤総合鑑定所代表取締役(当時)インタビュー<1998年9月、(財)都市経済研究所にて>
平成の経済復興は「都市再生」から

今、戦後最悪と言われる危機的な経済状況からどう脱却し、日本経済をいかに再生していくかが最大の課題となっていますが、私は「都市」の経済そのものが潰れてきたこと、これが日本経済失速の構造的要因であると見ています。わが国のあらゆる社会経済問題の根底に横たわる「都市問題」、今まさに、これをもう一度見つめ直さなければならないと思うんです。
今日までの公共投資のありようを振り返りますと、残念ながら、都市部への投資を拡充すべきところを、やみくもに公共事業をバラ撒いてきたという批判は否めない。また、公共事業そのものが政治的な手段に変容してしまった中で、本当に必要な部分にお金が回らなかったり、投資効果の低いところに必要以上のお金が回されているという現実もあります。
しかし、これからは「街づくり」、特に<街なか再生>に官・民を挙げて取り組んでいかなければならない。この点については社会的なコンセンサスもかなり熟してきているように思います。要は何をどう実践していくのかという段階に入っているわけです。走り出した「中心市街地活性化法」の課題そういう中で、今回「中心市街地活性化法」が国策として打ち出された。この法制度を活用し、官と民が互いに協力しながらどのような事業を具体的に展開していくか、この点が非常に重要ですし、民間サイドも最も関心を寄せている点だと思います。そうでなければ、日本全国の市町村を対象としたこの活性化法も‘単なるプランづくり’で終わってしまう心配があります。プランが実際の事業に結びついていくかどうかが大切です。国も、兆単位の大規模な予算を組んだ中で「都市中心部の再生」に資する有効な施策を具体化できるのか、問われていると言って良いでしょう。
私自身、不動産鑑定という仕事を通じ、再開発などのまちづくりの実務に携わってきましたが、従来の再開発事業地区に「中心市街地活性化法」をラッピングするような進め方も必要と思いますね。
‘真の豊かさ’創出にこそ投資を
ところで、日本ほど巨額のカネを海外に投資している国はありません。ところが、自分たちの生活環境の向上や真の豊かさの創出に結びつくような形で返ってくる投資はほとんどない。これは本当に悲しい話です。日本の住環境/住宅事情の貧しさ、もはや議論し尽くされた問題かも知れませんが、今も歴然たる「日本の現実」であります。
そうすると当然、土地問題に突き当たるわけですが、「なぜ、これほどまで土地の価格が高騰したのか」という<過去>と、「いったん下落し始めると底なし沼のように落ち続けるのか?」という<現在>の問題の両方を考えざるを得ません。
以前、米国の不動産鑑定士と議論をした時、彼は「日本の土地価格でいう‘相場’は理解に苦しむ」と言うんですね。つまり、「‘どこそこのビル’ということで土地の評価が上下するのは分かるが、ただ黙って寝かせていた土地の相場が上がっていくというのはおかしい」と。つまり、不動産の価値はあくまで「収益性」で評価されるべきものであって、日本の「土地評価」は正当な不動産評価ではないというわけです。無論、国情の違う米国と日本を同一には論じられません。しかし、日本以外の先進国では、全国土の土地総合価格はGDPのせいぜい1.5倍程度で、日本の1,600兆円というのは確かに異常な数字です。
現在、我々は「土地・債権流動化トータルプラン」として、共同債権買取機構の機能を拡充した<拡大CCPC>の検討を進めていますが、この基本的考え方は、いわゆる土地の‘含み益’の問題に突っ込んだ上で、いったん土地の価格を落とす。しかし、下落したまま経済がダウンするのではなく、一度落とした土地の価値を再び高めていくことで経済再生を図る− そのための方策です。
そういう意味でも、これからは「収益性」で不動産の価値を評価・鑑定するシステムにわが国も一大転換を図らなければならない。余談ですが、米国ではお金を預けるのは3割程度で、他は投資証券を買う。つまり、収益性に投資するわけですね。一方、日本はタダ同然の低金利の銀行にカネを預け、貯金が目減りするのを眺めている− これでは景気が良くなるはずがありませんわ。
<都市改造産業>は21世紀日本の基幹産業
日本の将来を考えると、今後の重点的投資の受け皿は「都市」でなければならないと思いますね。ところが、現実には出来損ないの都市ばかり出来て、さらに日本経済全体も行き詰まっている。
そういう意味で、私は<都市改造産業>を21世紀の基幹産業として展望しています。まさに国家的事業として新しい都市づくりを展開しながら、同時に、民の積極的参画を図り、新産業の育成を進めていくべきです。都市にヒトとカネが集まり、これがグルグル回る− これが活力に満ちた「都市」のあるべき姿でしょう。そのためにも魅力ある都市を創り上げていかなければならない。それには具体的な‘道具立て’も必要です。
今回の<中心市街地活性化法>も、単に地方都市の商店街を活性化するだけのための単体の話ではない。私の提言する「ノーカーゾーンの街づくり」というのは、魅力ある都市づくりと21世紀の<都市改造産業>育成のための一つの具体的な方策です。
日本の都市に投資するのは外国企業/外資でも構わない。重点的な投資を受けて、都市が自己活性化していく仕組みをもう一度構築しなければならない。
都市構造再編に向けた強力な政策推進を
最後に強調したいのですが、大都市圏の再構築は、21世紀・日本の国策の柱とすべきです。東京、大阪、名古屋、この三大都市圏がメインでしょう。どこもかしこもというやり方ではなく、重点的に取り組むべき問題として明確に位置づける必要があります。
私が暮らしている大阪の中心部は、キタとミナミの二眼レフですが、いずれも‘フン詰まり’のような状況になっている。これを打開していくためには、地域構造を抜本的に改造・再編するような施策が必要です。
大都市圏においても、また、地方都市においても「都市再生」への新しいシナリオが必要です。そのためには、申し上げた通り、「不動産評価」そのものも従来のやり方を見直さなければなりません。我々専門家自身も‘頭の切り換え’を求められています。私自身は、住宅はこれまでの半値、その他の不動産も3割減が一つのメドになると思っています。当然、そうなると大騒ぎになりますが、いったん値が下がった後はもうそれ以上下がらない、そこから「価値」が上昇していくようにする。こうして都市経済を再び活性化していく他ないと思います。
一方、走り出した「中心市街地活性化法」を本当に実りあるものとするためには、魅力ある街づくりへの事業展開を前提に、新しいシステムを積極的に導入していく必要があります。「ノーカーゾーン構想」は、これに対する具体的提案です。
また、身近なところでは、駅前等の放置自転車の問題もありますね。放置自転車が社会問題化している東京都では、何と年間約160億円もの予算をかけて処理対策を講じていますが、何ら抜本的解決に結びついてはいません。結局、対処療法を繰り返しているだけで構造的な部分は変わっていないわけです。しかし、今は100坪で1,000台、200坪で2,000台を収用できる新しい駐輪場整備のシステムも開発されている。だったら、まず山手線の内側で全面的に整備を進めていってはどうか、と。
民間が開発した優れたノウハウや技術をどんどん取り入れながら、きれいで魅力ある都市づくりを進めていく、これが官民連携の第一歩。これからは街づくりへの公共と民間の新しいパートナーシップが必要です。どの企業も具体的なプロジェクトが見えてくれば即、立ち上がってきます。逆に見えなければ動かないですね。
日本経済復興に向けた「都市の再生」、そして、真の豊かさの基盤となる魅力ある街づくりは、我々が次世代のために果たすべき責務でしょう。強力な政策推進のもと、官民一体のオールジャパンで進めていく必要があります。(談)
2000/02/03 update
【リンク】
都市改造システム株式会社HPへ
(都市改造システム(株)は坪田先生が創設された企業です)
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